亀島川のほとりで
東京駅の八重洲口から八重洲通りを東に向かって15分ほど歩くと、小さな川が見えてきます。
亀島川というこの川は全長1.6kmほど。
江戸時代には多くの商人が集まり、江戸に入る船舶のための船手奉行所も設けられ、賑わっていたそうです。
現在は2つの水門によって川は完全に閉じられています。
高潮による洪水の発生を防ぐ安全性と、高い護岸壁のない景観の美しさが特徴的な、静かな水辺の空間が広がっています。ベニスの運河、あるいはパリのサンマルタン運河を思い出すという人もいる、知る人ぞ知る東京の川なのです。
私たちカワイイファクトリーは、2014年にこの川のほとりにベーカリー+コーヒースタンド「Cawaii Bread & Coffee」をオープンしました。店舗内に併設した工房で国産小麦と自家培養発酵種でパンを焼き、最新のエスプレッソマシンでバリスタが抽出するコーヒーを提供しています。
パンの発酵種を変えました
開店から10年を経た現在も、この基本は変わっていません。が、パンについては変化がありました。それは「自家培養発酵種」を変えたことです。
開店当初から有機レーズンからおこした発酵種を中心に、販売されている白神酵母をパンによって単独で、あるいは併用して使ってきました。
現在は、北海道産の有機スペルト小麦と水からおこした「サワードゥ」を使っています。
この発酵種が安定するまでに4年かかりましたが、サワードゥ・ブレッド(それまでは「カンパーニュ」という名前で販売していました)、バゲットやバタールといったハード系のパンだけではなく、クロワッサンやブリオッシュ、小麦胚芽たっぷりのローフ食パンなど、ほぼすべてのパンにサワードゥを使っています。
それで何が変わったの?
サワードゥに変えたことによって、パンの味わいが変わりました。
「サワー」と言っても、私たちは酸味をなるべく抑えめにしているため、酸っぱさはさほど感じません。
それよりも、小麦の甘みや風味をより強く、複雑に感じることができるようになりました。嚙んだときの歯切れも心地よく、食べやすく感じます。そして日持ちがよくなった―より正確に言えば、味が劣化するスピードが以前よりもゆっくりになったように思います。
食べた後は満足感が高いのですが、時間がたつと心地よい良い空腹感を覚えるのです。消化がよいのでしょう。
半年たったころから、お客さまからおいしかったとお声がけをいただくことが増えました。毎週サワードゥ・ブレッドだけを購入されるお客さま、週末にサワードゥ・ブレッドを予約してから来店されるお客様も増えています。
あなたはサワードゥ・ブレッドを食べたことがありますか?
もし食べたことがなくても、さまざまなメディアのパン特集やお店紹介の記事で「サワードゥ・ブレッド」という言葉をみたことがある方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
もしくは、最近、パン屋さんでよく見かけるようになった、あれか…と感じる方も多いでしょう。
サワードゥ・ブレッドは、その味わい深さと栄養価の高さから、現在、欧米の都市で人気を博していますが、これから日本でもますます注目され、需要が高まっていくと思われます。
サワードゥ・ブレッドとはどんなパンなのか。
どんな歴史があるのか。
私たちの健康にどのような影響をもらたすのか。
おいしい食べ方やレシピ。
街のパン屋として、私たちがどうやってサワードゥを育ててきたのかをまとめ、サワードゥ・ブレッドのあれこれを記録していきます。
【つづく】
Cawaii Bread & Coffeeのサワードゥ・ブレッドをオンラインショップでご購入いただけます。
冷凍便、常温便のそれぞれホールサイズ、ハーフサイズからお選びください。